さよならはまたあとで
「ありがとう。俺、めちゃくちゃ嬉しい」
私はパッと顔を上げる。
「でも……ごめん。
でも、俺は優恵とは付き合えない。
好きになっちゃいけないんだ。
きっと、悲しませるから。」
前髪の隙間から見える八の字に垂れた眉が彼の切なげな表情を際立てている。
「でも私っ!」
この前知った秘密を口にしてしまいそうになって、私は慌てて口を噤んだ。
「分かった。…これからも、今まで通り居てもいい?」
律太が「もちろん」と言ってからすぐ、ゴンドラの扉が開いた。
少し遠くなった気がする私たちの距離。
普通に普通にと意識をする。
今まで通り居てくれると言ってくれただけ、いいじゃないか。
私は気持ちを伝えられた。
それで十分。