さよならはまたあとで
やっぱり。
そこには律太がいた。
一歩ずつ、屋上の縁に足を進めていく。
あと一歩で、彼は…
私は無我夢中で走った。
落ちていく律太の腕を、すんでのところで摑まえる。
私を見上げる律太はとても驚いた顔をしていた。
「なんで?」
聞いた事のない冷たさを含んだ声。
引き千切れそうな腕の痛みに堪えながら、私は泣き叫ぶ。
「なんでってなに!?なんで死ぬの!?」
喉が引き裂けそうだった。
「死ぬよ!俺は!!!だから放せよ!!」
私の手を振り払おうとする律太。
それを私は必死で堪える。
ふと下を見ると、心配そうに見上げる葛城と、海翔の姿がちらりと見えた。
もう大丈夫だ。
私は思い切って屋上の縁をつかむ手を離した。
片方の手は律太の腕を掴んだまま、体は空を切って、体いっぱいに風を感じながら落ちていく。
そのまま私の意識は遠のいていった。