それを愛だというのなら


次々打ち上げられる花火の音の振動が、お腹に響く。

火薬のにおいがほのかにしてきて、鼻を刺激した。

赤、青、色とりどりの花火が夜空に鮮やかな模様を描く。


「おお。久しぶりに見たけどすごいな」


近い距離で見える花火に、健斗も感嘆の声を上げた。

神様、ありがとう。

あ、違う。死神くん、ありがとう。

まさか生きているうちに、こんなに綺麗な花火を好きな人と見られるなんて、思ってもみなかった。

きっと私は、世界で一番幸せな女の子だよ。

胸の奥から何かがこみ上げてくるような、初めての感覚に泣きそうになる。

暗い夜空を昼のように明るく照らした前半のスターマインが終わると、周囲は急に静かになった。

もしかして、仕掛けの時間になったのかな。


「ありがとう。こんな素敵な場所に連れてきてくれて」


健斗にお礼を言うと、彼は優しく微笑んだ。

灯りはなくて、その表情はいつもより見にくい。


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