それを愛だというのなら


「俺こそ、瑞穂のためにできることなんて、何もないけど」


そんなことない。

健斗だってたくさん、私を幸せにしてくれたじゃない。


「一緒に生きていきたい。もっと、笑って、泣いて、くるくる表情の変わる瑞穂を見ていたい」


天使みたいな健斗の顔が、涙でにじむ。

ねえ、今何て言ったの。

一緒に生きていたい。

そう言ってくれたの?


「健斗……」


私、本当にバカだった。

どうして、短くても楽しい人生を送れたらいいなんて思ったんだろう。

人はどんな状況だって、生きられる限り、生きなきゃいけないんだ。

どうしてこんな思いまでして生きなきゃいけないんだって、叫びたい日もある。

だけど、この世に産まれて生きてきた限り、最後まで生きなきゃいけないんだ。

私は決して、ひとりきりで生きてきたんじゃないんだから。


「う、うざい。そういうウザいこと言うの、私の役目なのに。取らないでよ」


溢れて止まらない涙をぬぐい続ける。



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