それを愛だというのなら
「言っとくけど、病気の私、超ネガティブだから。ほんとに重い女だから」
「うん」
「いいの?」
「いいよ」
微笑む健斗に、想いが爆発した。
あなたが好きすぎて、他にどうしようもない。
「……大好き!」
勢いよく抱きつくと、支えきれなかった健斗の体が後ろに倒れる。
「バカ。女の子から押し倒すなよ」
健斗はそう言いながら、私の頭に手を伸ばす。
そしてそっと引き寄せると、触れるだけのキスをした。
健斗、ありがとう。
私頑張るね。
ちょっとムダ遣いしちゃった命だけど、それはそれで間違いじゃなかった。
だって、病気のままだったら、私とあなたは、きっと他人のままだったもの。
色々と迷惑をかけるだろうけど、どうか末永くよろしくね。
周りで響くのは天使の歌声にはほど遠い、セミの大合唱。
じりじりと肌を焦がす日差しの熱さ。独特な土の匂い。
私はこの夏を、生涯忘れることはないだろう。
ぎゅっと健斗に抱きついたまま、その感触や香りを忘れないように、五感を澄ませる。
全てを記憶に焼き付けておこうと必死になって。