それを愛だというのなら
「ごめん。またゆっくり説明するから!」
私は逃げるようにして、教室から出た。
屋上に向かう階段を上るうち、胸の鼓動が激しくなってくる。
体力がない頃ならただの動悸だと思うけど、今は違う。
胸の中で、ドキドキと緊張が入り混じっている。
重い扉を開けると、解放された屋上へ出る。
もうすぐ七月ということもあり、さすがに教室より少し暑い。
「えっと……」
水沢くん、どこだろ?
うちの学校の屋上は、昼休み限定で生徒の出入りが自由にできるようになっている。
他にも何組かのグループがお昼を食べていた。
きょろきょろしていると、後ろからぽんと肩を叩かれた。
「ごめん。遅くなった」
「水沢くん!」
「暑いな。日陰行こう」
水沢くんはさっさと先に歩いていってしまう。
私はその背中を小走りで追いかけた。
彼は慣れた様子で貯水タンクの影のブロックに腰をかけた。
「じつはここ、俺の指定席」
たしかに、けっこう暑いのに、この良い日陰に誰もいない。
少し疑問に思うと、彼は答えを教えてくれる。