それを愛だというのなら


「入学式から毎日ここにいるからさ。よくここに来る連中は、俺のお気にいりの場所だってわかってるんだよ。なんとなく、それぞれの場所が決まっている。俺も他のやつらの場所に入ろうとはしないし、あっちも空気読んでここには座らない」

「縄張りみたい」

「はは、ほんとだな」


微笑む水沢くんを見ると、ほんわり心が温かくなる。

見惚れてしまいそうになり、ふるふると首を振った。


「これ、一緒に食べようと思って」


保冷バッグから二つお弁当箱を出すと、水沢くんは目を丸くした。


「作ったの?」

「う、うん。慣れていないから、あまり綺麗じゃないけど」


昔お父さんが使っていたという大きなお弁当箱を、水沢くんが開ける。

そこには、ご飯にから揚げ、ウインナー、卵焼き。

野菜の副菜まで作る余裕がなく、仕方なく隙間を埋めるように詰められたゆでブロッコリーと、プチトマト。

お母さんに教えてもらいながら前日から仕込んでいたら、二歳下の妹にからかわれてうっとうしかった。


『ついにお姉ちゃんも彼氏ができたか!』


なんて、既に中2で彼氏がいる妹は、先輩面をしていた。


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