それを愛だというのなら


「すげ」

「食べられないもの、ない?」

「大丈夫。ありがとう」


慣れていないせいか、おかずそれぞれもちょっと不格好だし、詰め方もよくわからなくて、気づけば卵焼きがあっちこっち向いてしまっている。

それでも水沢くんは小さいことはいちいち突っ込まず、渡したお箸を持った。

しかし、なかなか手をつけない。


「ど、どうしたの?」


なにか良くない点でも……。


「いや、写真どうしようかと思って。やっぱ撮っておこう」


水沢くんはお弁当を横に置き、スマホを取りだす。


「やめて、恥ずかしいからっ」

「いいじゃん。SNSなんてやってないし、個人的に楽しむだけだから大丈夫」

「え~……」


こんな不格好なお弁当を、記憶じゃなくて記録に残すの?

ちょっと恥ずかしいけど、これは喜んでくれていると思っていいんだよね。

私がそれ以上反論しなかったので、水沢くんはスマホでお弁当を写すと、やっと食べ始めた。


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