それを愛だというのなら
「まさか、バイクで登場とは思わなかったよ」
「そっか。言ってなかったっけ。実は前に一緒に帰れなかったの、こいつを学校の近くに隠してあったからなんだ
よね。一緒に見つかったらまずいと思って」
暑そうにジャケットを脱ぐ水沢くんに、ドキッとする。
いけない。男の子が服を脱いでいるのをガン見して、勝手にドキドキしてどうする。
ジャケットの下は飾り気のない無地の黒Tシャツで、下は普通のデニム。
そんな姿なのに、なぜかすごく決まって見えるのは、整った顔のおかげなのか。すらりとした体型のおかげなのか。
少し見惚れてぼーっとしていると、水沢くんが穏やかな笑みを浮かべ、ぽんぽんとポニーテールにした私の頭を叩いた。
「可愛いじゃん」
かっ……!
「いいね、このフサフサ」
そう言う彼の指が、少し巻いてポニーテールにした私の髪をもてあそぶ。
あわわわ。ど、どうしたらいいの。そんなに見つめないで。
「よし。じゃ、行こう」
どう反応して良いかわからずに固まった私の肩を、彼がぽんと叩く。
すると、まるで催眠術からとけた人のように、すっと体が動いた。
もう……本気で言っていたのか、からかわれたのか。
やっぱり、つかみどころのない人だ。