それを愛だというのなら


「家まで送るよ」

「えっ」


意外。そんなこと、言いだすとは思わなかった。


「でも、うちここからバスで二十分くらいかかるよ」


水沢くんのバイクを押して行くには遠すぎるし、ここにバイクを置き去りにするわけにもいかない。


「おいで」


水沢くんは私を手招きする。

そして、自分のバイクの傍へ歩いていった。

そのミラーには彼がかぶってきたヘルメットがかけてある。


「これ、俺のお古だけど」


そう言って彼は、今まで見ていなかったシートの横にかけてあったらしい別のヘルメットを差し出す。

これを……差し出されたということは……。


「う、後ろに乗ってもいいの!?」

「うん。大丈夫、俺誕生日めっちゃ早いから」

「誕生日?」


どういうことかと詳しく聞くと、中型バイクに乗れるのは十六歳から。彼は高一ですぐ免許をとり、それから一年経っているので、普通の道路での二人乗りは法律的に問題ない。そういうことみたい。


< 70 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop