それを愛だというのなら
「本当だ、去年の進級式で何故か忽然と姿を消していた水沢くんだ」
「進級試験で落ちて、ドロップアウトした水沢くんだ」
通行人が、彼らを見ないようにして通り過ぎていく。
私はそのまま立ち去るなんてできなくて、固まったようにそこに立ち尽くしていた。
「そうだけど。何か用?」
呆れたようなため息をつき、健斗は平然と答える。
「嫌だな。久しぶりにあったんだから仲良くしよう」
「これ、すぐそこの……何てったっけ。バカばっかりの公立高校の制服だろ? 天下の水沢も落ちぶれたもんだな。なんだよこの髪。高校デビューかっての」
相手の中で一番背が高く、ガタイの良い男子が、健斗の髪の毛をつかもうとする。
すると、健斗はパシッとその手を振り払った。
「……触るんじゃねえよ」
その声は、聞いているだけのこっちが凍えそうなほど冷たかった。
そこでハッとする。
相手の制服、どこかで見たことがあると思った。
この辺では有名な、私立高校の制服だ。優等生の代名詞。