それを愛だというのなら
「わかった、付き合うからその子は解放しろ」
珍しく険しい顔をした健斗が、こちらに向かって言う。
「水沢くん、かっこいい~」
「じゃあ行こうか」
あっさりと私の自転車から手を引き、彼らは水沢くんを囲んで行ってしまう。
ど、どうしよう。私を庇って……私のせいで、健斗が……。
「だめ……」
どこへ連れていかれるのかわからないけど、健斗にとって愉快な展開にならないことは輪私にだって簡単に予想できる。
「ちょっと待って!」
私は自転車をその場に置いて、駆け出した。
まだそれほど遠くに行っていなかった健斗たちに、簡単に追いつくことができた。
「待って!」
他校の生徒たちのあいだからかろうじて届いた健斗の肩にかけられた黒いバッグをつかむ。
「なんだよ」
ガタイの良い男子ににらまれる。
怖いけど、怖がっている場合じゃない。
「離してっ」
「は?」
「離してよっ。健斗を離してっ!」
勇気を振り絞って大きな声で怒鳴ると、通行人がこちらを振り返る。
商店街のお店の人たちも、何事かと店の前に出てきた。