それを愛だというのなら


「ここまでは追って来ないだろ」


荒い息をしながら、健斗がベンチにに座り込む。

そこは、商店街から少し離れたところにある交番の隣の公園だった。

汗をぬぐって見上げた空は、すっかり茜色に染まっていた。

こんなに全力疾走したのは小学生の時以来で、膝ががくがくと震える。

すとんと健斗の横に座ると、彼は汗で濡れた前髪をかきあげた。


「自転車、後で取りに行かないとな……」


かろうじて私はリュック、健斗はバッグを肩にかけていたから、貴重品は置いてこなくて済んだ。

後で横の交番のお巡りさんに相談して、現場までついてきてもらおう。

今回は完全にこっちが被害者だし、何も問題ないはず。


「ごめんな。巻き込んで」


息を落ち着かせた健斗は、下を向いて大きなため息をついた。


「あの人たち、三条学園のひと?」

「そう。俺、実は中等部まで三条に通ってたんだ」


三条学園っていうのは、健斗に絡んだ人たちの通う私立高校の名前。



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