それを愛だというのなら
何が色々あったのかが気になるところだけど、ここでぼかすってことは、今はまだ語りたくないということだろう。
とにかく、有名私立からドロップアウトして、茶髪に染めたりピアスを開けたり、バイクに乗ったり……わかりやすくぐれてしまったわけね。
それでも粗野な感じがどこにもないのは、きっと元々のお育ちが良いからなのかな。
健斗は薄く笑いながら、制服の胸の辺りを持ち、ぱたぱたと空気を送った。
「ちょっと待って。普通レベルの公立にいることをバカにされても仕方ない理由にしないでよ。それって私のこともバカにしてるの?」
「いや、そうじゃなくて。俺は元々……」
「元々どこにいたって関係ない。健斗はなんだかんだ言いながら、真面目に学校来てるもん。私が困っていれば助けてくれたし、勉強も教えてくれた」
だから、そんなふうに自分を嗤わないで。
「ちゃんと生きてるんだもん。どんな事情があろうと、他人を嗤ったりしていいわけない」