それを愛だというのなら


「……泣くなよ」


突然視界がぼやけたと思うと、健斗がそう言い、私の頭を撫でる。


「泣いてないっ」


どうして私が泣かなきゃならないの。

ごしごしと目をこする。


「瑞穂ってさ、ウザいくらい一生懸命生きてるんだな」


ウザいくらいは余計だ!


「だって」


抗議しようと顔を上げると、そのまま声を失ってしまった。

健斗が、突然私の手を握ったから。


「でも、そういうウザいとこ、俺は好きだよ」


そう言い、彼はギュッと握った手に力を込める。

こちらを見つめる色素の薄い目は、少し細められていた。

でも、いつもみたいな何かを諦めたような雰囲気は漂っていなくて。

ただただ、優しかった。


「……っ」


男の子に好きだと言われたのなんて初めてで、かあっと体が熱くなる。

握られた手から、全身に熱が伝わってくるみたい。


「瑞穂といると、こんな俺でも前向きになれそうな気がする」

「健斗……」

「瑞穂。これからも俺の彼女でいて。ずっと、隣でウザいこと言っていてほしい」


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