それを愛だというのなら
「ただいま……」
やっと自転車を回収して家に着いた頃には、夜八時を回っていた。
「何してたの! 電話にも出ないで!」
病気の頃は五時には家についていた私が暗くなっても帰ってこなかったので、お母さんに心配をかけてしまったみたい。
「ごめんなさい」
素直に謝る。
なんか疲れちゃって、反抗する気も起きないや。
お母さんの横をすり抜けて行こうとすると、すれ違いざまにこんなことを言われた。
「元気になったからって、遊びまわってちゃダメよ」
遊びまわる?
私、遊びまわってなんかない。
たしかに友達と買い食いしたり、健斗のバイクの後ろに乗せてもらったりはしたけど、悪いことは何もしていない。
「謝ってるじゃん」
「あーあ、口まで元気になって。病気の頃の方が素直で可愛かったわ」
そんなお母さんの嫌味が、心に突き刺さる。
「じゃあ、なに? お母さんは、私が病気で、ずっとお母さんの力に頼らないと生きていけない状態の方が良かったって言うの?」