それを愛だというのなら


にらんで言い返すと、お母さんはハッと目を見開き、次には泣きそうな顔をしていた。


「ごめんね、違うの。ただお母さんは、瑞穂が心配で……」

「もういい。今度からはちゃんと連絡するから」


残り少ない人生なのに、こんなくだらないケンカしたくない。

さっさと謝って、一件落着。

そういう気持ちでキッチンに入ると、私の分の夕食がラップをしてテーブルに置かれていた。


「瑞穂。お母さんにちゃんと謝りなさい」


ソファでテレビを見ていたお父さんが、それだけ言った。

テーブルの上にあったのは、綺麗なちらし寿司と、たくさんのチューリップから揚げだった。

ちらし寿司の上には、帯状に敷かれた卵やハム、きゅうりにイクラ。

星形に切り抜かれたチーズを見てハッとした。

すっかり忘れてた。今日は七夕だ。


「今、おつゆ温めるから」


お母さんがそそくさと台所に入っていく。

そうか……お母さんは家族みんなで食べられると思って、こんな可愛いちらし寿司を作ってくれたんだね。


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