それを愛だというのなら
今まで、何かイベントがあっても、私がお腹いっぱい食べられなかったから、脂っこいものは食卓にはあまり上らなかった。
だから、せっかく病気が治って初めてのイベントだし、とはりきってくれたんだ。
「お母さん……ごめん。ごめんね。大好きだよ」
涙が零れそうになった。
お母さんは何も変わっていない。
自分のことばかり考えている、私が悪かった。
病気の頃には毎日感じていたお母さんへの感謝が、元気になって恋をして、どこかに隠れてしまっていた。
なんてひどい娘なんだろう、私は。
「いいのよ。さ、食べよう食べよう」
お母さんは笑いながら、温めたお吸い物をテーブルに出してくれた。
こんな温かいご飯が食べられるのも、あと少しなんだ。
そう考えると、家にいる時間がとても貴重なものに感じられた。
残された時間は、あと一か月半くらい。
家族、友達、そして健斗。
全部を記憶に焼き付けるのに、いったいどれくらいかかるだろう?
足りない。全然、時間が足りないよ……。