きらきらふわり
久野木先輩はとても成績が良かったから、受験勉強はいらないみたいだと他の先輩から聞いていた。

先輩はいつも花の名前だとか、飼い猫の話だとか、海水の濃度の話だとか、河童はいるかだとか、コロコロと話題を変えてまとまりのない、いろんな話をしてくれた。

お喋りって訳じゃない。

「河童ってさぁ、いると思う? いたら……皿、触ってみたいね。あ、宿題はもうやった? わかんないとこあったら教えるからね。へぇ……数学嫌いなんだ。俺、数学好きだよ。それより歴史の方が嫌い。あ、河童っているのかなぁ。いたらどうする?」

て感じで一方的に一息で話し終わると、電池が切れたようにじーっと窓の外を長いこと眺めたり。

私はただ、光を受けて反射する先輩の眼鏡の縁を見つめて、なんとか先輩の話に返事を返そうと考えてみたり、自分から離しかけてみようと勇気を振り絞ろうとしたり。

結局、当時の私には自分から先輩に話しかけるなんて事がどうしてもできなくて。

それなのに。

それなのに――

久野木先輩に告白しようか、なんて思い始めた。

どうやら好きになってしまったようだと、小さな胸が痛みと共に訴えてきたから。








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