彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
なんでこんなに飛ばすの!?
黒い車を引き離すため!?
(でも、これだけ飛ばせばついてこれないよ!)
予想通り、黒い車は置いてきぼりを食ったように小さくなっていた。
あっという間に小さくなり、見えなくなる。
わずか数分の出来事だったけど・・・
「まけたんですか!?」
「ふん、当然だ。」
ホッとしながら言えば、当然のように獅子島さんが言う。
車はスピードを落し、制限速度へと戻った。
「よかった~!」
「あれぐらい、軽いものだ。」
「はい!すごいですね、獅子島さん!僕、尊敬します!瑞希お兄ちゃんの次に!」
「そこは嘘でも一番といえ。やれやれ、さっさと帰っ・・・」
そう言いかけた獅子島さんの言葉が途切れる。
「危ない凛道!!」
「え!?」
めったに大声を出さない人が出した声。
気が抜けて、手すりを離していた私の胸の前に、彼の利き手が伸びてきた。
「あ!?」
私の体を庇うように抑えると、ハンドルを自分の方へと切る獅子島さん。
キッキッキッー!!
「あああああああああああああ!?」
「くっ・・・・!」
体がカクンと上下したと思えば、視界が動き出す。
グルグルと回る車内。
回る瞬間、私のいる助手席めがけて、車がツッコんできたのが見えた。
(ああ、私をかばおうとして、獅子島さんはハンドルを切ってくれたんだー!)
何が起きたか、スローモーションで悟る私。
(なんて、のん気に考えてる場合じゃなーい!!)
キキー!
キッキっ!
キキキキ!!
「目が回るぅ~~~~!?」
しっかりと持ったつもりだったけど、重力には勝てなかった。
私の手から離れた食糧が宙を舞う。
――――――――――バサバサバサ!!
「ごめんなさぁーい!わざとじゃないので、僕の人生を汚さないでくださーい!!」
「――――――――――大目に見てやる!!」
私の謝罪と獅子島さんの罵声が響き渡る。
同時に、車内を飛び交うポテトとから揚げ。
ジュースとハンバーガーも飛んでいる。
キキッ!ガックン!
「わああああ!?」
「くっ!?」
止まった衝撃で、シートベルトが体に食い込む。
前後に揺れる身体と、停止する車。