彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
「あなた、そろそろ時間よ。」
「ああ。それじゃあ凛、お父さんはもう行くよ。」
「うん、いってらっしゃい。」
「学校の話、また聞かせてくれ。今度は、数学で100点取ってくれ。」
「それなら、英語も100点が良いわ。96点しか取れなかったんだもの。いい話が聞きたいから。」
良い話。
「良い話じゃなきゃ、できないの?」
「え?」
「は?」
思わず、聞いてしまった。
「勉強の話以外で、学校で何があったとか・・・話ちゃダメ?」
「凛、まさか、『今』話そうって言うんじゃないでしょうね?」
「お父さん、遅刻しちゃうよ。」
困った顔をする母親と、時計を気にしながら言う父親。
「お父さんが帰ってから教えてくれ。」
「そうよ。凛も遅刻するでしょう?」
「・・・わかった。」
言いたい気持ちを拒まれ、言葉を飲み込む。
(せっかく、話せる気になったのに・・・・)
これでまた、話せないだろう。
帰ってきたら、なんでもなかったと言うだろう。
そうとしか言えないから、忘れたふりをするか、別の話をするだろう。
「凛、今日は早く帰れるんでしょう?お昼ご飯いるわよね?」
「え?凛の学校はもうテストが始まってたのか?」
「違うわよ、あなた。夏休みが近いから、テスト前でも、午前中だけ授業の時間割になってきてるのよ。だから凛、お昼は―――」
「いらないよ。マキちゃんの家で、勉強会するから・・・」
「あら、そうなの?あちらの親御さんに、よく言うのよ?」
「うん。帰り遅くなるから・・・」
嘘をつく。
裏切り者の家になんか行かない。
でも、そう言わなければ、自由に動けない。
「行ってきます。」
「いってらっしゃい、凛!」
「しっかり、勉強してくるんだぞ。」
「うん。お母さん、お父さん。」
疑われることなく、信じてもらえた。
これで行ける。
(瑞希お兄ちゃんのところへ・・・・)
私に必要なのは、瑞希お兄ちゃんからの愛情。
それが兄弟愛でも構わない。
彼からの無償の愛が、今の私の支えだから。