さよなら、もう一人のわたし
「そんなに人気あったの?」
「それなりに話題になっていたのよ。私の周りでは特にね。綺麗な人だったからね。彼女も女優になるの?」
「千春は演技が上手なのに、別のことがやりたいんだって。普通に暮らしたいみたい」
「そうなの? 意外」

 わたしは頷く。そして付け加えるようにして言った。

「千春がお母さんのこと綺麗だって言っていたよ」
「そんなことないわよ」

 お母さんは否定しながらも悪い気はしなかったのか、嬉しそうに微笑んだ。

 部屋に戻ると、携帯の電話番号を表示した。
 尚志さんの電話番号だった。同時に千春の言っていたことを思い出していた。
 いつもなら簡単に電話できていたのに、彼の電話番号を押すことができなかった。

「また今度電話をしたらいいかな」

 わたしはそう言い聞かせ、自らを納得させると、電話を机の上に置いた。


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