さよなら、もう一人のわたし
「そうだよな。お前、いいこと言うな。景気づけに大学でも見てこようかな」

 弘は目を輝かせこぶしを握る。 

 わたしは弘の言葉に眉根を寄せた。

「だから、来年通うかもしれないキャンバスを一目見てこようかなと思ってさ。志気を高めるために」

「そんなのより千春の写真でも手に入れたほうがやる気が出そうだよね。弘の場合は」

「くれるの?」

「あげない。自分で入手しなさい」

「まあ、そうだよな。それはおいといてさ、一人で行くのもなんだし、京香も一緒に来ない? 志望校はそこだよな」

「そうだね」

 弘にも、高校にも大学を受けないことは伝えていない。
 だわたしが通うはずだった大学をなんとなく見てみたかったのだ。そこに行けば彼を遠くから見られるかもしれないという気持ちがなかったといえば嘘になる。

 わたしたちは相談した結果、一度家に帰って着替え、駅で待ち合わせることにした。
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