さよなら、もう一人のわたし
 千春は思い当たる人がいなくて言っても差し障りのないような名前を出したのか、本当に兄のような存在がいいと思ったのかは分からない。だが、尚志さんを理想とするなら、彼女の理想はかなり高い。

「かっこいい人だよ。千春のことを一番大事に思っていると思う」

 加えてわたしの大好きな人だけど、それはあえて伏せておいた。

「そんなにかっこいい?」
「千春のお兄さんだもん」
「確かに」

 彼は難しい顔をしていた。

 千春が本気でそう思っていたら、彼女の理想は相当高いだろう。

「千春の好みはよく分からないけど、同じ大学にいけるようにでも頑張ってみたら? もちろん志望を変更しても問題ないならだけどね」

 彼女は理系でわたしは文系で、一概に比較はできないが、彼女もかなり成績は良かった。恐らく、兄と同じ大学に行くだろう。

「俺の成績じゃ厳しいよ。それに理系と文系じゃつながりもなさそうだよ」
「話せる機会はあるんじゃない? それなりにね」

 弘はいい人だとは思う。一目ぼれのような恋愛だったが、彼が本気で千春を思っていることはよくわかる。だが、千春の好みに合致するかは分からなかったからだ。

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