さよなら、もう一人のわたし
「一緒に行かないよね?」
「お兄ちゃんがチケット持っていたから一緒に行けば?」

 その言葉にドキッとする。
 あの日以来、彼に会うことはなかったが、彼のことを考える機会は増える一方だ。

「尚志さんの連絡先も知らないし」
「聞いてないの? 全く」

 わたしは千春から彼の番号やメールアドレスを教えてもらった。

「迷惑じゃないかな」

 妹の友達というだけでわたしは彼とは親しくない。

「お兄ちゃんに会いたくないの?」
「会いたいけど」
「それなら電話しなさいって。大丈夫。京香に暴言を吐かせないからね」

 千春のこの自信はどこから来るのか全く分からなかった。

< 77 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop