さよなら、もう一人のわたし
 外よりも暗い空間に水槽が各所に設置されている。室内を照らすライトがその水槽に映り、少し幻想的な雰囲気をかもし出す。

 水族館の中はとにかくカップルが多かった。手をつないでいるカップルを見ると仲むつまじくて羨ましい。

 そのとき、後方からやってきたカップルの肩がわたしとぶつかる。
 わたしはその場でよろけそうになってしまう。

「大丈夫?」

 尚志さんがわたしの肩に手をまわし、よろけそうになったわたしの体をしっかりと支えてくれた。

「大丈夫です」

 尚志さんにつかまれた左肩が熱い。
 尚志さんがわたしの肩をつかんだままということに気づいたのだろう。謝ると、わたしの肩から手を離す。

 嫌なわけではないのに、なぜか妙に意識してしまう。

「でも、本当に人が多いな。休日の日にわざわざ出かけなくても……」

 尚志さんがわたしを見た。

「別にそんなつもりじゃなくて」

 わたしと一緒に出かけたのを後悔しているのではないかと思ってしまった。

「いえ。尚志さんはどこかに出かけるのが嫌いなんですか?」
「正直、あまり好きじゃないかな。人が多いのは苦手なんだ」
「人見知りとかしないし、外に出かけるのが好きなのかなって思ってた」

 彼は肩をすくめる。

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