さよなら、もう一人のわたし
 そのとき店員が水をもってわたしたちの席まで来る。実際は違うけど、わたしと彼は恋人同士に見えたのだろうか。そう思うと嬉しかった。
 わたしたちはそこで時間をつぶし、あとは公園や適当なお店を巡り、家に帰ることにした。

 わたしは尚志さんに家の傍まで送ってもらうことになった。

「今日はありがとうございました」

 マンションの前で足を止め、頭を下げる。
 生まれて始めてのデートは楽しい思い出になった。

「こっちこそ楽しかったよ」

 彼は満面の笑みを浮かべている。
 社交辞令の可能性があることは分かっている。それでもわたしは勇気を出して彼に問いかけることにした。

「また誘っていいですか?」
「え?」

 彼はわたしを見る。

「一緒にいろいろ出かけたいなって」
「でも千春を誘ったほうが楽しいと思うよ」
「わたしは尚志さんとも出かけたいです。ダメですか?」

 千春と出かけても楽しいだろう。だが、わたしは彼ともっと一緒にいたいと思ったのだ。
 彼は不思議そうに肩をすくめていた。
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