さよなら、もう一人のわたし
「遅くなってごめんね」

「たまにはいいわよ。楽しかった?」

 今日、水族館に行くということは母に伝えておいたからだ。

「楽しかったよ」
「でも京香がデートね」

 母親は嬉しそうに微笑んだ。

「デートって、どうして知っているの?」
「見ていたら分かるわよ。それにさっき買い物に行こうとしたら京香と男の人が歩いているのを見たから。あの人と一緒にいったのよね。素敵な人ね。あの人と付き合っているの?」
「彼氏じゃないから。友達のお兄さんなの」
「そうなの? もし彼氏になったらそのときは紹介してね」

 わたしは母親の言葉に頷いた。

 わたしと尚志さんが恋人同士になるなど、ありえないことだし、想像だけで満足しておこうと心に決めた。
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