さよなら、もう一人のわたし
「でも私は一人っ子だから兄妹とかって羨ましいですよ。千春に恋人ができたときにでもきちんと子離れというか妹離れをしたらいいんじゃないですか?」
「それって俺がシスコンみたいだな」
「妹思いってことだと思います」

 尚志さんの頬がほんのりと赤くなる。
 わたしは変なことを言ってしまったんだろうか。

 彼は困ったように微笑み、何かを言おうとした。だが、彼の言葉を、携帯の着信音がかき消したのだ。彼は携帯を確認すると、顔を引きつらせてから、呆れたような笑みを浮かべる。

「全くあいつは」

「千春ですね。どうかしましたか?」
「ものすごくくだらないことだよ」

 彼はそのメールの内容を教えてくれなかった。
 しばらく経って玄関が開く音が聞こえてきた。

「千春だろうな」

 尚志さんは立ち上がる。わたしは本を床に置いて、尚志さんの後をついていく。
 リビングにはスーパーのビニール袋を小脇に抱えた少女が立っていた。
 千春はわたしたちを見ると、そこからアイスを三本取り出した。

「メロンとオレンジとピーチどれがいい?」
「オレンジ」

 千春はわたしにアイスを出しだした。そして、メロンを尚志さんに渡す。

「これを買いに行ったの?」
「後は夕食の買い物をいろいろとね。お兄ちゃん、麦茶を入れて」

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