大切な人へ
気付き


「本当にもぅ帰っちゃうの?」


紗羅が寂しそうに言って申し訳なくなるが
今日のバイトがどうしても休めなかった


ごめんね と小声で3人に挨拶をして
こそっとホールを抜け出した



別館から本館に入ったところで


『あっ…』 「あれ…?」


鈴木先生にばったり会ってしまった…


彼は授業の時もフリートークはほぼなし
淡々と進めるタイプで
挨拶しかした事が無かったのに


「優勝おめでとう
藍野さんもう帰るの?

リレーのメンバーに打ち上げ
誘われて向かってたんだけど」

あ。名前…覚えてくれてるんだ


ジャージ姿の彼は優しい表情で
私の目を見て話してくれてる

スラスラと話してて
いつもの先生とは別人に見えた




『はい…どうしてもバイト休めなくて
リレーではお世話になりました!
朝練まで来てくれて 勝てたの先生のお陰ですね 』

少しの違和感を感じたけど
その雰囲気に乗ってお礼を言った



「いや…メンバーが頑張ったからだよ 笑
藍野さんもすごく応援してくれてたから
みんな張り切ってたし!お疲れ様 」



そう言って目を細めて優しく笑った…




ドクン…





私はその瞬間体が固まった…



優しそうなその表情や雰囲気


そして、その笑顔に引き込まれる様に_







「でも今からバイトって大変だね。
帰りは自転車?」


先生の声にハッとする…


『あ…はい!じゃ行きますね!さよならっ』


手を上げて挨拶を返してくれた先生を
まともに見れず ダッシュで自転車の所まで行った





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