大切な人へ

車の中ではずっと時計を見てた
私には少し大人っぽい気がするけど

本当に似合うようになったら
またつけてるとこ見てほしいな...


でも帰りの車の中の彼は
どんどん表情が暗くなっていく

帰りたくないって思ってくれてたらいいけど
もし違うなら何を考えてるの?


家についてコーヒーでもって誘った

来てくれたけど...やっぱりおかしい

『どうしたの...?』

なんて聞いていいかもわからない...

なんでもないよって言うけどそんなわけない


『ごめんなさい...わからないよ
何かした?教えてください』

「美優はなんにも悪くないから」

悲しい顔をした彼をぎゅっと抱きしめた
でも彼は抱きしめてくれない...

さっきまでの恋人の様な空気は
どこにいってしまったんだろう...

やっぱり夢を見てたみたい



『今日はね?朝まで一緒にいたかったの...』


「...うん」



『でも今日は帰りますか?
1日一緒にいてくれて嬉しかった ありがとう』

彼の声と、少し遅れた返事で
今日が終わったことを悟った


「俺も楽しかったよ ありがとう」

ドアまで彼を見送る...
靴を履いてドアに近づく腕をつかんでひっぱり...


『...おやすみなさい』

彼の唇に触れるキスをした

「おやすみ...」  パタン....



閉まったドアの前にたたずみ

今日初めての悲しい涙が溢れた...

声を我慢しても漏れてしまうくらい泣いた


ドアの前からしない足音に気付かないまま

私は泣いていた...


シャラ....

左腕の時計も一緒にないていた


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