ラブ パラドックス



「お前、今日の晩飯なに?」

「もやし」

「またかよ。お前がもやしになるんじゃね?」

「なりません」


夏目くんと二人きりのエレベーターが下に降りていく。朝のさわやかさは影を潜め、さすがの夏目氏も、疲れの色が濃い。


「もやしを侮ることなかれ。想像してみてー。沸騰させた白湯スープに、豚バラ入れて」

「おお」

「そこにもやしとニラをたっぷり入れて、軽ーく煮込む」

「やべ。うまそう」

「そうなんですよ。美味いんですよ。最高に」


ねえ、だからうち来ない?そう再チャレンジしてみようか、迷っていた時だった。


「ねえ、夏目くんあそこ…」


仕事を終え、くたくたの私たちを待ち受けていたのは美優さんだ。ビルの一階正面出入り口から、わずかに駅寄りの電柱を背に、スマホ片手に立っていたのだ。


明らかに誰かを待っている。

昨日、夏目くんが美優さんに迷惑してると聞いたばかりの私としては、見過ごせない光景だ。
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