ラブ パラドックス
「2つ目の信号を過ぎたところで止まってください」
隣に座っている夏目くんが、運転手にそう告げた。
はっとして車窓の外を確認した。どうやら夏目くんの家の近くらしい。
夜の黒の中に、見慣れない景色が広がる。
夏目くん。
帰らないで。
一人にしないで。
願うだけで口に出せない。それどころか、夏目くんのほうを向けない。
そんな時だった。
シートの上、お互いの小指と小指の背が、軽く触れた。
反射的に離した私の手を、夏目くんの手が追ってきた。
手の甲を、楽に包む大きな手。
———わたしが欲しい手
離せない。離したくない。
夏目くんの手の中で、手のひらを上に向け、指を絡める。
夏目くんが、わたしを見つめる。
いつもの皮肉も、嫌味な目線も、ほんの少しの笑みも、一切ない。
私たちはタクシーが止まるまで、ただただ、見つめ合っていた。
隣に座っている夏目くんが、運転手にそう告げた。
はっとして車窓の外を確認した。どうやら夏目くんの家の近くらしい。
夜の黒の中に、見慣れない景色が広がる。
夏目くん。
帰らないで。
一人にしないで。
願うだけで口に出せない。それどころか、夏目くんのほうを向けない。
そんな時だった。
シートの上、お互いの小指と小指の背が、軽く触れた。
反射的に離した私の手を、夏目くんの手が追ってきた。
手の甲を、楽に包む大きな手。
———わたしが欲しい手
離せない。離したくない。
夏目くんの手の中で、手のひらを上に向け、指を絡める。
夏目くんが、わたしを見つめる。
いつもの皮肉も、嫌味な目線も、ほんの少しの笑みも、一切ない。
私たちはタクシーが止まるまで、ただただ、見つめ合っていた。