ラブ パラドックス
手を引かれ、タクシーから降りた。


手を引かれたから降りた?

違う。私の意思だ。


夏目くんのマンションは、そこからすぐの場所だった。



夏目くんの部屋に足を踏み入れた。

先に入った夏目くんが、ドアを背に立つ私に向き直る。


私の目を見つめたまま、身をかがめ、近づく顔。

伸びてきた手が、手探りで鍵をロックした。



ガチャリ、背後の音が聞こえたとき、唇が重なった。



一度。

微かに触れ、離れた唇。


互いの呼吸が重なる距離で、目線が交じる。


瞳を閉じ、吸い寄せられた二度目は、ゆっくりと。

押し当てるよう重ねた唇は、触れる時間が徐々に伸びる。


次第に熱を帯びていき、冷たいドアを背に、夢中でキスをした。


夏目くんの腕に抱きしめられながらのキス。

少し痛いくらいの、男らしい強い力に、胸が熱くなった。
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