ラブ パラドックス
一度、離れたか離れないかでまたすぐ重なる唇。

そっと、うなじに添えられた手。


深いキスじゃないのに、酸欠でもないのに、甘い眩暈がした。



わたしが抱きしめると、すぐにきつく抱きしめ返してくれて、気持ちがどんどん膨れ上がって。


欲張りになって、もっともっと、夏目くんが欲しくなったところに。



「あ!」


忘れ物を思い出した時みたいな声が聞こえたかと思うと、突然、バッと突き放される。

びっくりしてショックを受ける私に、生真面目な顔でこう言った。



「職場でこんなのまずいだろ」



真面目か!



「帰ろうぜ」


あっさり背を向けた夏目氏。

わたしのこの盛り上がり、どこに持っていけばいいの!



「不貞腐れんな。ほら帰るぞ」


夏目くんはわたしの鞄を手渡してくれて、戸締りの確認を始めた。
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