ラブ パラドックス
振り返り「あれ」と小さく驚いた店長が立ち止まった。
遅れて走ってきた涼平が、お疲れ様です!と声を張り上げた。
こんな時間まで働いていたのか。さすがに疲れた表情だ。
「俺たちさっきまで近くで飲んでたんです。そこで涼平にも報告したんですけど、葉月と付き合うことになりました」
おかげさまで。は違うし、ごめんも違う。
事実だけを伝え、後の言葉が続かず黙ってしまった。
店長は、ああ、と短く発し、目線を落とした。
涼平が居心地悪そうにその姿と俺を交互に見る。
店長が顔を上げ、俺を見て笑顔で口を開いた。
「悔しいなあ。ほんと、悔しいし悲しいです」
「自分から声かけておいてあれなんですけど、なんて言ったらわからないです」
店長がわずかに微笑むが困ってもいる。ああもう。俺かっこわる。
本当に言葉が出てこない。