ラブ パラドックス
「俺が絶対あいつを幸せにする」なんか言えないし。

(だって、俺があいつを好きでたまんねえのに、マウント発言できるわけない。幸せにしてやりたいけど)


「あいつ俺のだから、もう手を出さないでくれ」とけん制するのも違うだろ。

(もし今後誘われても、葉月が断ればいい話だ。え、断るよな。俺と付き合ってるんだから、俺以外の男と会わないよな)


経験値が乏しい俺が、自問自答を繰り返していると、店長が口火を切った。

「俺、何度か凛子ちゃんと会って、家に送っていったとき、部屋に上げてもらえなかったんですよね。でも夏目さん、詳しくは聞いてないですけど、凛子ちゃんの部屋に上がって、彼女、酔っぱらうくらい飲んだんですよね?」

「はい」

「それ聞いたとき、凛子ちゃんが俺に気がないってわかったんです」

「・・・」

「わかったんだけど、自分でもびっくりするくらい攻めたんです。会いたいし、好きになってほしかったから必死でした」

悔しいなあ。と、白い息と吐いた言葉が刺さった。

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