ラブ パラドックス
「よかった…出てきてくれた」

「おまっ、いつからいたんだよ。インターホン鳴らせよ」

「鳴らせないよ。置いて行かれたんだよ?夏目くんから来てくれるの待つしかないじゃない。電話も出てくれないかもしれないし」

「ほんとにごめん」


葉月を抱き寄せて、玄関に入って扉を閉めた。

腕の中で、胸に顔をうずめたまま「夏目くんごめんね」と俺にしがみつく葉月。


「ごめん。ごめんな」

「ううん。わたしが悪いから謝らないで。話聞いてくれる?」


葉月の震える声を聞くと、なんかもう、俺のほうが泣きそうになった。

くだらないことに腹を立てて、大切な人をこんなにも傷つけてしまった。


強く強く、抱きしめた。


ベッドに並んで腰かけて、葉月の右手の甲に自分の左手を重ねた。

そっと繋ぎ直すと、葉月がちょっとだけ笑顔になって、その笑顔に安堵するが、手は触れているものの、二人の間の距離が、今の俺たちの心の距離を表しているように思えて辛い。

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