ラブ パラドックス
「もう泳いでないのか?」

「…はい」

「夏目先生は忙しいんだろうけど、気が向いたらスクール来いよ。子どもたちを見てやってくれ」

「いやあ、」

「遠慮すんな。最近の子どもたちも、変わらず元気いっぱいでしんどいんだわ」


と、大きな扉の向こうから凛子がやってきた。


戸惑いながら近づいてくる凛子を「来いよ」と呼んだ。


「コーチ、俺の彼女の葉月凛子。同じ事務所で先生してる。凛子、こちら川原コーチ。俺の恩師でバカ怖かった」

「怖いは余計だ」なんて言いながら、コーチが凛子にデレデレだ。こんなコーチ見たことない。


凛子は丁寧に挨拶をしている。こういう時の凛子の所作は、姿勢が良くて、とても綺麗だ。


「そうか、あの陽が俺に彼女を紹介するか…大人になったな…」

俺も年取ったなと、コーチが目を細める。その仕草に、急に熱いものが込み上げる。


「今日は会えて良かった」と、帰ろうとするコーチを呼び止めた。


俺、言わなきゃいけない事がある。



「コーチ、結果残せなくてすみませんでした」
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