ラブ パラドックス
「お二人?」

「あ、こいつだけ」


夏目くんは私だけパイプ椅子に座らせて、自分は立っている。 ”こいつ”も、密かに好きな呼び方ベスト2だ。


言われた通りに千円札を数枚渡した。夏目くんを睨みながら。何日分の食費だと思ってんのよ!

小さな机の上に、直径15センチ大の水晶玉と、真っ白の紙切れと鉛筆が一本。

向かいに座る魔女風のおばさんが、じっと目を見つめてくる。瞬きもせず、じっとだ。

え、なに、もう始まってるの。


「ここにあなたの名前を書いて」

鉛筆を手渡され、どうするべきかと夏目くんを見上げる。


「書けよ」

「でも個人情報…」

「名前だけなら情報でもなんでもないだろ」


そうだけど。なんか、このおばさんの目、心を見透かされそうなの。占いはまったく信じてない。これは、断じて。



【葉月 凛子】


縦書きで書いた。ちょうど、中心に。


鉛筆を置き、向きを変えて紙を差し出す。占い師は紙を一瞥し、また私の目をまっすぐ捉える。

無意識に肩に力が入り、鞄の持ち手を強く握っていた。
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