ラブ パラドックス
夏目くんがこらえるように小さな首なあくびをした。涙目になってちょっとかわいい。わ、ちょっと耳の上の髪の毛がはねてる。

広い肩幅、厚い胸板。筋肉の隆起がとてつもなくかっこいい。

きれいに割れたシックスパック。無駄なお肉がついてないウエスト。


「触っていい?」

「却下」

「ちょっとだけ」


夏目くんはジロリと睨んだかと思うと、ふ、と吹き出した。


「おはよう」

「お、おはよ」


直視できない。

わたしメイク落とさず寝ちゃって、絶対酷い顔してる。寝癖とか大丈夫かな。臭くないかな。


「あの、いまさらだけど何か着る?でも私の服は小さすぎるよね。かと言って元カレの置いていった服なんてないし…」

「んなもんあっても絶対着ねえよ。バカかお前」

「…申し訳ない」


不謹慎にも、バカかお前のフレーズに胸キュンだ。


「なあ、”バカかお前”に反応してんだろ?」

「へ?」

「間抜けなツラすんな。昨日言ってたろ。本当は強引な男が好きで、お前とかこいつって呼ばれたいとか」


わー!

わたしってば、そんなことまで!
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