ラブ パラドックス
「初めは、母一人子一人、一緒になって悲しみに暮れた。でもある日ふと、こりゃいかん。このままじゃまずいって思った」

「うん、」

「お金のこととか、当時は全くの無知で。父が亡くなったら無収入だって思い込んでたの。このまま授業料の高い私立になんて通えないって、そう思ってた。実際は莫大な保険金受け取ってたし、貯蓄や資産も結構あったから、そんな心配一切なかったんだけどね」

「ああ、」

「父が亡くなるまで、大学はそのまま上に上がるつもりだったから、受験勉強なんて一切してなかったんだけど、いつまでも泣いてばかりの母のためにも、私は家を出てお互いが自立しなきゃいけないって思った。奨学金制度を利用して、寮のある学費が安い国立の大学受けなきゃ、みたいな」


世間知らずの子供のくせに、泣いてばかりで何もできない母に、嫌悪感を抱くようになった。


いつも一緒だった仲良しグループから次第に離れ、放課後の居場所が図書館に変わった。

お金がないから塾にも行けない。独学で受験勉強するしかないと、必死で勉強した。

友達の紹介で知り合った当時の彼氏とも、夏が終わるころには自然消滅。


猛勉強の甲斐あって、無事志望校に合格し、晴れて実家を離れることができた。


大学には本当にいろんな人がいて、今まで自分がいかにぬるま湯につかっていたか、どれだけ狭い世界で、どれだけ甘やかされて、大事に大事に育てられていたか思い知った。
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