ラブ パラドックス
「奨学金の返済があるし、貯金がないと不安で、それで生活費削ってる」

「そうか」

「ある日突然お父さんがいなくなって、お母さんを助けなきゃ、私一人で何でもしなきゃって必死で頑張り続けて…弱音の吐き方忘れた」


ポンポン、と背中を二度、軽く叩いた夏目くんが、ふわり、両手で私をそっと抱きしめた。


「ほんとはお前って呼ばれるの好きだし、俺様な男の人が好き。わたし強くなんかない!頭の中、いつもネガティブ思考でぐるぐるで、それで、それで、」

「そうか」


耳に届いた、優しい声。

夏目くんの大きな手が、頭を撫で、髪の毛を滑る。

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