ラブ パラドックス
「なんてな。何もしねえよ」


手の拘束を解き、一度ベッドから降りた夏目くんはベッドの端に座りなおした。

放心状態の私を引っ張り起こしてくれて、にやり。してやったりと意地悪に笑った。


「わるい。怖がらせたか?」

「・・・」

「だってお前、一晩中眠れなかった俺の身にもなれよ」

「ごめん、ほんとに」


ドキドキと、鳴りやまない心臓を必死に鎮めながら、昨日の迷惑行為の数々が頭を駆け巡る。


酔って吐いて寝て。おまけに夏目くんを帰れない状態にしたまま。

狭いベッドに横たわる、酔っぱらい女。


最悪…


「俺も生身の男だから、お前が無防備に寝ててやばかったんだよ。うーん、とかエロい声出して寝返りうってくっついてくるし」

「エロい声?」

「あ?」

「ご、ごめん」

「いやマジで。ごめんじゃねえよ。俺がお前に万が一何かしてても、文句言えねえぞ」

「はい。おっしゃる通りです」


夏目くんが眠れなかった原因が、まさかそういうことだったなんて。

全体的に申し訳なさでいっぱいなんだけど、ちょっと喜んでる自分もいる。
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