ラブ パラドックス
「シャワーしてくる」

ひとまず夏目くんから離れたい。胸がどきんどきんと、まるで警告のように鳴りやまない。

もうやだ。わたし、意識しすぎ。


「そう言えば、何度かスマホ鳴ってたぞ」

「あ、ほんとに?」

「キッチンカウンターの上に置いたまま」

「どうも」


隣をすり抜けるわたしに、ケロッとした顔でそう教えてくれた。


悲しいなあ。こんなにドキドキしてるのはどう考えても私だけ。

昨日の失態を考えると自業自得なんだけど。


はあ、落ち込む。


スマホを見ると、友人からのメッセージに紛れて、湊さんから2件。

昨日は、おつかれ分のメッセージは返したから、おやすみ分とおはよう分だ。


「なあ」

「なに?」


ベッドに腰かけたままの夏目くんと目が合う。

距離が離れた分、顔を見れるようになった。


でもきっと、私の顔はまだ赤いままだろう。
< 97 / 294 >

この作品をシェア

pagetop