僕の星
 三田という男子は、ウエーブのかかった柔らかそうな髪を、肩まで伸ばしている。
 律子がショートボブでさっぱりしているのに対して、彼のほうが少女っぽい。

 進太のほうは、以前奈良で会った時と同じように、薄茶色の髪にきれいな顔立ち。
 微笑みを浮かべ、里奈を見下ろしている。
 身長があるため、尊大な態度に見えるのかもしれない。それにしても、相変わらずの上から目線に、里奈は嫌な気持ちになった。

「里奈、怒った?」

 空になったグラスの底をストローで突きながら、律子が困ったように訊いた。

「怒るも何も……」

 困るのは里奈のほうだ。どうすればいいのか、まったく分からない。
 こんなだまし討ちは酷い。

(もう帰ろうかな。でも、コーヒーを頼んじゃったし……)

 逡巡していると、三田が話しかけた。

「僕達、夏季の学習合宿に来てるんだ。なっ」

 隣の進太に相槌を求める。

「うん……今日はちょっと抜け出してきたんだ。あと30分ぐらいで戻らないとヤバイのさ」

 全くヤバイ雰囲気でなく、彼は言った。

「学習合宿?」

 そういえば彼らは受験生なのだと、里奈は思い至る。
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