僕の星
「ほらほら、時間が無いから早く並んで」
「あっ」

 りっちゃんが背中を押すので、里奈はつんのめって、進太の腕に支えられる格好になった。

「おお、早すぎるぞお前!」

 周りの男子達がはやし立てる。
 里奈は顔が熱く、真っ赤になるのがわかった。

 そして男の子の腕が、思いのほか強く支えてくれたことに感銘を受けた。

「じゃあ、撮るね!」

 何が何だか分からぬうちに、初めて会った男の子とカメラに納まってしまった。
 進太は「サンキュー」とひと言残すと、さっと背を向けて、今度は別の女の子に声をかけている。

 里奈はなぜか落胆し、その軽々しい行動に無礼を感じた。
 無意識に何かを期待していた自分にも呆れ、いたたまれなくなる。

 盛り上がっている男女の輪から、里奈は急いで離れた。
 何ともいえない屈辱感が、染みのように胸に広がっていく。


「ねえ、君!」

 五重の塔の反対側に来た時、不意に肩を叩かれた。
 ビクッと体を震わせ反射的に振り向くと、先ほどの男子達と同じブレザーを着た少年が一人立っている。里奈は思わず顔をしかめて、

「何ですか!?」

 とげのある声になってしまった。

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