虚無たちの葬失
「これ以外に容疑者いるんじゃねえの?」
「でも、多分これで全員だ」
純也が右手の指を鳴らし、口元に手を当てて瞼を閉じる。
教卓では美緒が明らかな失望の表情で
「やっぱり警察に任せるほかないわ」
と小説に手を伸ばした。
隣では遥が何かを考え込むようにチョークの一点を凝視し、ポニーテールの先に触れる。
「……やっぱり、僕らがこんなことをしても意味はないのかな」
教室の隅で、誠が囁いた。
「……何か、引っかかる」
遥が誰にも聞こえない声でそう呟いたとき、純也が息を呑んで目を見開き、顔に驚愕の色を浮かべた。
「……まさか」
その声に唯一気づいた遥が純也と顔を見合わせた瞬間、二人の脳裏によぎったのは受け入れられない真実だった。
「……わかった」
意図せずともこぼれた純也の言葉に全員が顔を上げ、窓際を見る。
純也の背後には、赤く、赤く染まったがらんどうの夕焼け空が広がっていた。