ポンコツ同盟

「…そろそろ時間じゃない?」

樋口が時計を見てそう言った。

「あらほんと。慎一郎さんといるとあっという間に時間が過ぎるわ。」

「…ははは。」

愛想笑いをしているつもりだろうか。全然笑えてない。

「出ましょうか。」

お店を出ていく2人の後ろにそっと付いていく。

「今日は楽しかったわ、忙しいのにごめんなさいね。」

「まったくだ。」

「今度はピクニックですね。美味しいお弁当作りますね。」

おばあちゃんの背後から樋口に眼圧をかける。

「…ああ、楽しみにしてる。」

やるじゃん樋口。顔はひどく引きつってるけど、言葉は満点。

「じゃあね。」

そう言って樋口が帰ろうとすると、おばあちゃんは焦って呼び止めた。

「慎一郎さん!」

「…何?」

「…帰り道がわからなくなりました。」

「…はあ?」

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