ポンコツ同盟

「…お母さんすごいね。」

「そりゃあ、大事な息子の幸せがかかってるんだもの。」

お母さんには誰もかなわない。

「匠、優人くんとのこと、お母さんも応援するわ。でも、世の中、まだ偏見を持っている人はたくさんいる。これからつらい思いをすることもあるかもしれない。それでも、優人くんのことも、匠自身のことも、大切にしてね。どんな決断をしても、私たちはあなたの味方よ。」

「ありがとう…」

匠の目には涙が溜まっていた。確かにお母さんの言う通り、まだまだ偏見は多い。懸念することはたくさんある。

「あのさ匠…学校では大丈夫なの?その、優人くんとの関係、みんな知ってたりするの?」

「それは大丈夫。実は、前にみんなにバレたとき、冷やかされてからかわれて、とても嫌な思いをしたんだけど、クラスメートが助けてくれて。それからはみんな何も言ってこないよ。」

「そうなんだ。良かった。」

「そのクラスメートが樋口くんっていうんだけど、すげーやつなんだ。人の意見にまったく流されなくてさ、」

…樋口?パッと頭に浮かんだのは、ボサボサヘアーの樋口くん。

…いや、まさかな。

「優人くんにも進路のこと、伝えておきなよ。」

「うん!ありがとう!姉ちゃん、優人とのこと、謝るなって言ってくれたの、すげー嬉しかった。姉ちゃんはいい教師になると思う。」

「ありがとう。目指す大学が変わったんだからしっかり勉強しなよ。分からないとこは教えてあげるから。」

「おう!」

弟の笑顔は眩しかった。いつか、生徒たちをこんな笑顔にできる先生になりたい。

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